水は生命に欠かせません。水は、地球の表面積の 70%、人の体の 60% ~ 70% を占めています。湖や河川、水路、地下水脈などの水源は、香港固有種のローマーズツリーフロッグ(アマガエルの一種、学名 Liuixalus romeri)やホンコンパラダイスフィッシュ(タイワンキンギョの一種、学名 Macropodus hongkongensis)をはじめとする多種多様な生物や植物を育んでいます。都市部に住んでいると簡単に水が利用できてしまいますが、実際には淡水資源は危機に直面しています。地球は水の惑星と呼ばれるほど水が豊富にありますが、淡水はわずか 2.5% しかありません。そしてそのほとんどは、山や極地の氷、または地下深くに閉じ込められているため、利用できる淡水はわずか 1% 未満です。
淡水はどこにでもあるわけではありません。気候や地形によって偏りがあります。自然の河川や湖がほとんどない、人口密集地域の香港では、広東省を流れる川、東江の水を輸入したり、貯水池で確保した雨水を利用したりしています。毎日、292 万立方メートルの淡水がポンプで組み上げられ、水道網を通して香港市民に供給され、飲み水や料理、掃除、園芸など、さまざまな用途に利用されています。また、家庭用だけでなく、水は、モノやサービスを供給しているあらゆる産業に使われています。例えば、利用可能な淡水の 70% は農業で消費されています。このまま人口と水の需要が急速に増えていくと、限りある水資源の獲得競争も激化していくでしょう。もし東江の水が干上がってしまったらどうなるでしょうか?
香港は幸いにも水の安定供給に恵まれていますが、世界的に見ると水不足は各地で発生していて、世界人口の約 20% が水の不足している地域に住んでいます。近くに大量の水がある地域でさえ、水が確実に供給されるとは限りません。例えば、中国では黄河や長江の上流域にある支流が、アメリカでは灌漑(かんがい)により地下の巨大な水脈が枯渇の危機にあります。さらに水質汚染がきれいな水の確保を困難にし、気候変動が雨の降り方や水の蒸発速度に影響を及ぼすため、このような危機はいっそう深刻になるでしょう。香港で現在確保している水の供給量では、2030 年には需要に追いつかなくなると予想されています。また、2030 年までに世界人口の約半数が水不足の危機に直面するといわれています。私たち人類以外の動物や植物も危機にひんしています。1970 年以来、淡水にすむ動植物の種類は半減しています。淡水資源の危機は生命の危機でもあるのです。
水が循環しているおかげで、淡水は絶えず一定の量に保たれ、浄化されています。マハトマ・ガンジーは「地球上には全ての人が必要とする量は十分にあるが、全ての人の欲を満たすほどの量はない」といっています。人口が増加しても、一人ひとりが節約すれば世界中の人々ののどを潤すことができるでしょう。水の消費量を減らすには効率的に使うことが重要です。全ての人々に行き渡るようにきれいな水を節約し、健全な水の生態系を維持するためには、水資源の保護が欠かせません。そこで次のような心がけを提案します。